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【校長ブログ】清涼感が伝わる本『自閉症の僕が生きていく風景』(2021年09月27日)

読書の秋です。学校内では、さいたま市立高校3校とさいたま市立図書館とのコラボ企画「第4回市立高校POPバトル」が行われています。市立高校3校の生徒が選んだおすすめ本10冊を高校生のオリジナルPOPとともに展示しています。なかなかの力作ぞろいです。

いつの間にか日暮れが早くなり、午後6時には日が暮れています。先日、本校の図書館司書さんのおすすめの本を読みました。東田直樹『自閉症の僕が生きていく風景』(2020年 角川文庫)。雑誌『ビッグイシュー日本版』の連載コラムをまとめた本。思いが伝わらないつらさの中で「心が石ころだらけ」にならなかったのはなぜだろうと自問自答する著者。あとがきを読むと、清涼感につつまれます。コロナ禍ですが、生きていることの喜びを実感する一冊です。あえて、あとがきをご紹介します。

「たくさんの失敗を繰り返しながら、人は成長します。僕もそうです。いくつもの挫折を重ねて、現在まで生きてきました。きっと、これからも同じでしょう。僕が生きてきた風景は、僕にしか語ることができません。それは僕が特別だからではなく、僕自身の人生を振り返った結果、生まれた文章だからです。ひとりひとりの人生にドラマがあります。

 僕にとって自閉症とは何か。大人になった今のも、その答えを探し続けている自分がいます。なぜなら、幸せも不幸も自閉症という理由だけで説明できるほど、幸福の定義は単純ではないことを改めて知ったからです。

風になり、花や木の声を聞いていた幼い頃、僕の見ていた風景には人は存在していませんでした。やがて自分も人だということに気づき、思いを伝えることや人と関わることの楽しさ、そして大切さを学んで行ったのだと思います。自閉症の僕が生きていく風景は、これからも変化し続けるでしょう。未来という時間の中で世界も変わります。僕の瞳に映る景色が美しいものでなくても、自分の心が汚れていなければ、希望をなくすことはありません。世界中で悲しいことが起きないように祈りを捧げている人々と共に、あきらめない人生を送ることが僕の願いです。」