避難訓練講評
本日の避難訓練の講評も兼ねて少しお話します。
避難訓練では、1秒遅れることが命取りになってしまいます。
今日の訓練では、全ての報告が完了し、みなさんの無事が確認できるまでの時間は、
7分9秒でした。昨年度まで、新型コロナウイルス感染症のため、
4年間避難訓練をしていませんでしたので、本日の避難にかかった時間は参考タイムとしておきます。
さて、災害から命を守る一番簡単で一番シンプルな対策は、何かあったら避難するということです。
東日本大震災でも、避難した人は助かったケースが多く、
避難しなかった人は亡くなってしまった方が多いのは事実です。
皆さんは「釜石の奇跡」という話は知っていますか。
2011年3月11日、マグニチュード9.0の東日本大震災が発生しました。
激しい揺れがおさまった後、部活をしていた生徒たちが「津波がくるぞ、逃げろ」といって
大声で叫びながら避難を始めました。他の生徒たちもそれに続きました。
隣の小学校では、子どもたちが校舎の3階に避難していました。
しかし、中学生が一斉に非難する様子を見て、校舎から出て、中学生に続きました。
そして、無事に指定された避難所のグループホームに到着しました。
しかし、津波の様子を見た生徒たちが、「ここじゃだめだ」と、
さらに高台にある介護福祉施設に避難することを先生に進言しました。
再度非難する途中に、近隣の保育園から園児を避難させるのを手伝い、
その様子を見た近隣住民もそれにつられて避難しました。
全員が介護福祉施設に無事着いた時には、津波は中学校と小学校の屋上を遥か超えて、
最初に避難したグループホームにも、3mを超える津波が押し寄せていました。
ここには、避難三原則という教えがありました。
原則 1:想定にとらわれるな。
原則 2:その状況下で最善を尽くせ。
原則 3:率先避難者たれ (「真っ先に逃げろ」)
ハザードマップに示されている想定にとらわれず、ここまでくればもう大丈夫と考えるのではなく、
その時出来る最善を尽くしたからこそ、避難することが出来たのです。
また、人はいざと言う時になかなか「逃げる」という決断ができません。
自分の所は大丈夫だろうと自分に都合の良い解釈をして、
その場に留まってしまうことが多いのです。中学生が率先避難者として避難を開始したことで、
周囲の住民も避難を行い、大人たちの命も救ったのです。
「避難」するということは、とてもシンプルで簡単な対策ですが、とても勇気のいる決断です。
けれども、その決断によって自分の命も周りの命も救うことがあります。
自然災害は人間の力ではどうしようもありません。
自然災害からは逃げるしかありません。
1923年9月1日にマグニチュード7.9と推定される関東大震災により、
死者105,385人、全潰全焼流出家屋は293,387の被害が発生しました。
今年は2024年、関東大震災から丁度101年後になります。
近年頻発する豪雨や、猛暑、台風などの異常気象も含め、「天災は忘れた頃にやって来る」のでなく、
今や「いつでもやって来る」ことを自覚しないわけにはいきません。
想定を超えた災害の常態化を前提に「自分は大丈夫」という過信を捨てることが不可欠です。
命を守るために最も大事なのは、早く安全な場所に逃げることです。
南高生の皆さん、率先避難者として勇気ある行動を期待します。
以上で講評とします。