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【校長ブログ】親ガチャ

 中央公論2022年3月号を読みました。3月号のテーマは、「格差と出自の研究」です。 2021年の流行語の一つになった「親ガチャ」という言葉。子どもがどんな親のもとに生まれるのは運まかせであり、家庭環境によって人生を左右されることを、スマートゲームの「ガチャ」にたとえた言葉だそうです。

 社会学者である土井隆義筑波大学教授は、「『親ガチャ』が表すのは、様々な偶然の結果の積み重ねではなく、出生時の諸条件に規定された必然の帰結として自らの人生を捉える宿命的な人生観だ」ととらえています。その背景には、若者が他者との関係性がうまくとれない、つまり、コミュニケーション不足があるのではないでしょうか。内閣府の「世界青年意識調査」の分析では、友人や仲間との関係を悩みや心配事と感じる若者が、2000年代以降増大しているそうです。

 テレビのコメンテーターとしても活躍している明治大学文学部の 齋藤 孝 教授の『くすぶる力』(2013年・幻冬舎)では、本の帯に「僕も20年くらい、くすぶっていました。決してムダな時間ではなかった」という書かれています。よく、「人生は挫折を知らない奴はだめだ」と言う方がいます。そのようにおっしゃる方は、たいがい成功している方が多いようです。人生、挫折をしないで過ごせるに越したことはありませんが、それができないのが、また人生です。

 私は歴史が好きで、歴史上の人物を調べたりする時がありますが、ある意味、歴史はくすぶりの極致です。慶応義塾大学の創始者で、1万円札の肖像画である福沢諭吉も「門閥制度は親の仇で御座る」(『福翁自伝』)と、出自をとられていました。

 齋藤教授は、「素直で貪欲な態度で人に向かう」「仕事の中で疲れない一点をみつける」など具体的なアドバイスをしています。「失敗は準備不足と経験不足で起きる」とも言っています。準備して、チャレンジして、経験を増やして、また準備してチャレンジすることの大切さを説いています。

 コロナ禍で閉塞感が漂っています。人生は、様々な出会いと挑戦であふれています。私は、人生は決して「親ガチャ」ではないと思います。