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【校長ブログ】われ一人、荒野を行く

3月10日は第57回卒業証書授与式でした。コロナ禍で3回目の卒業式になりましたが、感染防止対策を徹底して、保護者の方は1名のみの出席です。旅立ちの卒業式ですが、3月12日の国公立大学2次試験を目指している生徒もいます。今朝も教室で自学自習をしている生徒がいました。卒業生の皆さん一人一人のご活躍を心から祈念しています。ちなみに、本日の私の式辞を紹介します。

 暖かさと寒さが交互に行き合いながら、校内の木々にも春の訪れが感じられてまいりました今日の佳き日に、御来賓の皆様をはじめ、多くの保護者の皆様方の御臨席を賜り、「第57回卒業証書授与式」を挙行できますことは、卒業生はもとより、私たち教職員にとりましても、この上ない喜びでございます。ただ今、卒業証書を授与いたしました317名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。

 卒業生の皆さん。本日、浦和南高等学校からそれぞれの夢と希望を持って、新たな道へ歩み出していきます。新型コロナウイルス感染症のパンデミック、世界的な大流行と宣言されてから二年がたちました。この間、皆さんは、3カ月におよぶ学校の臨時休業、部活動の停止、海外研修旅行の中止など多くの教育活動の制約を受け、100年に一度のパンデミックの中で旅立ちます。これを不運と思いますか。私は違うと思います。今、日本も、世界もさまざまなものが変わろうといます。政治のあり方も、経済のとらえ方も、企業の理念、国際秩序の在り方さえ揺らいでいます。コロナ禍で、あらゆるものが変化しています。社会は解のない課題であふれています。私たちの社会は常に不確実で、多くの選択肢から論理的比較検討をし、一つの解に到達して決断をしなければなりません。これからたくさんの人生の岐路に立つと思いますが、多くの知識を集積し適切な判断ができるよう学び続け、果敢な決断ができるようになってください。

 卒業生の皆さん。私たち教員は、生徒の皆さんに教えることが仕事ですが、私たちも生徒の皆さん一人一人から多くのことを学びます。私は校長として皆さんと共に3年間を浦和南高等学校で過ごしてきました。私はここにいる卒業生の一人から、生きることの尊さを学びました。家を出る時の「行ってきます」、家に帰った時の「ただいま」というあたり前の日常生活が、どんなに幸せなことであるのかということです。13年ぶりに埼玉県でベスト5になった女子バスケットボール部の皆さんからは、仲間への思いを形にする団結力を学びました。また、全国高校サッカー選手権大会埼玉大会準優勝のサッカー部の皆さんからは、人間としての成長と選手を支える部員やマネージャーの存在を忘れない感謝の気持ちの表し方を学びました。皆さん、この命を大切に生きていこうではありませんか。

 卒業生の皆さん。「新型コロナは未来を10年早く連れてきた」と言われています。コロナ禍の前から速かった時代の変化は、ますます速くなっています。また、社会の変化とともに、科学の進歩にも目覚ましいものがあります。その結果、皆さんが学んだ知識も急速に古びていきます。皆さんが生きる時代は「人生100年時代」です。若い時に一度学べばよいという時代は過ぎ去りつつあります。急速に変化する社会で長く活躍し続けるためには、知識を折々に学び直し、また考える力を常に磨き続ける必要があります。

 卒業生の皆さん。私は、2014年にノーベル物理学賞を受賞された赤﨑勇さん(1929~2021)の「われ一人、荒野(あれの)を行く」という言葉を皆さんに贈ります。この言葉は、強い信念で物事を貫く覚悟の大切さを教えてくれます。20世紀中には不可能だといわれた青色LEⅮの発見は、人類社会を大きく変えた発明です。「われ一人、荒野(あれの)を行く」という言葉を胸に刻み、高い目標を掲げ、信念を貫いて研究を続けられた赤﨑勇さんらの不屈の精神を読み取れます。このことは「努力なしの偶然の発見はない」ということが言えます。いつも目標を持って努力していないと、偶然の幸運も見逃され、せっかくのチャンスも逃げてしまうのです。高等学校を卒業しても、学び続けて、大いに活躍してください。

 最後になりましたが、卒業生の保護者の皆様、お子様の御卒業、心からお祝い申し上げます。皆様には、PTA会員として、本校の教育活動に対し、温かい御理解とお力添えをいただきましたことに厚く御礼申し上げます。

 卒業生の皆さんの、これからの大きな活躍を心から願いまして、式辞といたします。